ブータンツアー報告会(辻信一先生×渡邊智恵子)

22世紀に残すもの 課外授業

 辻信一先生&渡邊智惠子の「ブータンツアー報告会」

    

辻先生に誘われてブータンツアーに参加した当財団の発起人、渡邊智惠子は、

「この国ってなんて優しいんだろう、と思った」
「ブータンでは、日本人が忘れかけていた優しさを思い出させてもらいました。人には多様性があるということ、障害を持った人もいますが、その人達とも一緒に生活をしましたが、何の別け隔てもしないのがブータンの人々でした。」

 

そんなツアーは、ブータン東南部のチモンへインドのアッサム州からの「裏道」を通っていくそうです。

「チモンに行き始めたのは、ぼくのガイドで、その村出身のペマ・ギャルポとの出会いがあったからです。
ペマとは十数年前の旅で意気投合、「あなたとは前世の兄弟だ」と言われて、気がつくとその気になっていました。」

と辻先生から、ブータンツアーのそもそもを教えてもらいました。
いつも、チモン村に到着すると、

「村に到着する前に、まず四方を囲む山の上から村を見下ろす格好になります。それは何度見ても息をのむような光景です。
なんでこんなところに村があるのか、と思うような場所ですが、伝説によれば、魔物たちが村を襲おうとしたとき、神々が村を救うために湖のように見せて、魔物たちを追い返した。実際、霧がかかると本当に湖のように見える。そして村がその底に沈んで見えなくなる、そんな場所です。」

一度行ってみたいものです。

到着したら、どこでも大歓迎を受ける様子はこんな風。渡邊曰く

この村の人にとって、ゲストは幸せを運んでくる人、マレビトであり神様です。だから、お客様が訪ねて行くと家にあるもの全部でもってもてなしてくれる、そういう習慣があります。」

「私たちが着くと村の外まで総出で迎えてくれる。そして、どんなに貧しいおうちでもお酒はあるので、お酒を出してくれます。みかん、卵、さとうきびでもてなしてくれるのですが、かれらにとっては貴重な食べ物、それを提供してくれます。」

 

さて、チモン村と辻先生のナマケモノ俱楽部とはどんな結びつきがあったんでしょうか。

「チモン村ではペマを中心に、ぼくたち日本のナマケモノ倶楽部も協力して、オーガニックコットンを35年ぶりに復活させましたが、これも昔ながらの焼き畑なんです。
焼き畑は、近代農業によって遅れたものとされ、駆逐された農法です。
環境への負荷が大きいと言うけど、でも、何千年と続いてきたのはその焼き畑です。
現代的な化学農業なんて50年でもう限界が見えているのに。
チモンでは焼き畑でコットンをオーガニック栽培、服にするまで、すべて自分たちの手で作っています。
今後どのように進んでいくにしても、まずはこの原点を確認することが必要だったんだと思う。」

 

そして、チモン村では、障害者と健常者の分け隔てはほとんどないといいます。むしろ、障害者は聖なる人なのだ、と。

「ペマをはじめ、何人にも障害者についての彼らの感じ方を訊いてきたんだけど、多くの人が「特別な人」という言い方をする。健常者にある何かが欠けているから障害者なんだけど、健常者の方に欠けていることも多い。どうも障害者はそれを思い出させてくれる「特別な人」のようです。
神仏との関係も、普通の人とはちがう近さをもっていると考えられているらしい。一種の「神聖さ」をもつ人びとだ、と。」

 

そんなブータンの問題点は?

「ブータンの良さも、グローバル化という強風を前にして“風前の灯”だと言う人たちはたくさんいて、ぼくもある意味ではそう思う。
でも、一方で、世界全体が近代化し、グローバリゼーションの道を突き進んできて、しかし今その破綻が明白になりつつあるのも事実なんです。
『グローバル化の終わりはすでに始まっている』という人たちが世界に増えてきていますが、ぼくもその一人です。」

「経済はもともとはローカルであり、ローカルこそが経済の本質なんだと。
今、ぼくたちはそれぞれの地域で、この経済の本質に戻らないといけないのではないか。
でもそれは過去に後戻りすることではない。GNH(国民総幸福)だって、単なるノスタルジアじゃないんです。

「その意味で、まだ大きく外部に依存しすぎていないチモン村での実験が他の村や町にインパクトを与える。
そしてブータンが、世界中にインパクトを与えうる。
そういう可能性はあるし、それにぼくも連なっていけたらうれしいな、と思っています。
ブータンが岐路に立っていると言えるなら、日本だって今まさに岐路に立っています。
状況は、実はブータンよりずっと深刻だともいえるくらいです。
日本の小さな村の事例に学びながら、どういう社会を人生を選択するか、考えるときです。」

報告会の書き起こしの全文を読みたい方はこちらからどうぞ!!
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辻信一×渡邊 ブータンツアー報告会-pdf

 

<辻信一 プロフィール>

文化人類学者。環境運動家。明治学院大学国際学部教員。「スローライフ」「GNH」「キャンドルナイト」などをキーワードに環境=文化運動を進める一方、環境共生型の「スロー・ビジネス」にも取り組んできた。東日本大震災以後は、「ポスト311を創る」キャンペーンを展開。著書に『スロー・イズ・ビューティフル』(平凡社)、ゆっくりノートブックシリーズ(全8巻、大月書店)、『ナマケモノ教授のぶらぶら人類学』(SOKEIパブリック)、『よきことはカタツムリのように』(春秋社)など。DVDブックシリーズ「アジアの叡智」のうち第6巻は、ブータン奥地への旅を描いた『タシデレ! 祈りはブータンの空に』
ナマケモノ倶楽部サイト

 

 

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